隧道倶楽部 ④
佐伯 圭
おおし
旧太子駅
鉄山の鉱石を運ぶために
「太子線」の始発駅として設けられたその駅が
1974年(昭和49年)に廃止となって
半世紀近く
やまあい
山間の町の
2年に一度の現代アートの会場から
足を伸ばし
その廃墟を ふたたび訪れた
なぜ ここに こんなにも惹かれるのか
温かな
眼の 手ざわりを
わたしは 欲している と言うことだろうか
「廃墟 1」
とき 2019年9月
ところ 群馬県旧六合村 旧太子駅
ここから始まっていた
鉄の石の旅も
いまは 遠く
鉱石の 幻のざわめきが
耳をかすめるばかり
せめて
なつかしく ザラついた「とき」に
この眼で 触ろう
著者略歴
佐伯 圭(さえき けい)
1954年 伊勢崎市生まれ
1985年 詩集「透過光」(装填の会)
2013年 詩集「ゴッタ」(榛名まほろば出版)
2015年 詩集「ネオ・エッダ」(同上)
個人詩紙「濫書堂通信」発行
詩誌「東国」会員
群馬詩人クラブ会員、日本詩人クラブ会員
群馬県伊勢崎市在住