隧道倶楽部 ②

佐伯 圭

トンネルなどという 安易な言葉を使いたくない
ならば「隧道」ならいいのか
「隧道」とは おまえにとって いったい何なのか

片側から掘ったものが隧道で
両側から掘り進めたものが トンネル
などという俗説もあり
一方で 古代 墳墓に通じる地下道を
「隧道」と言った とも聞いた

何らかの障害を 迂回することなく
ここと 異なる世界をつなぐ それが「隧道」なら
「隧道」は 実は
わたしたちの世界の いたるところに ある  

 「隧道 その2」

          とき  2009年6月
          ところ 長野県上田市上田城   

 厳密に言えば、隧道とは言えない
 なぜなら、掘り穿ったものではなく
 城の空堀にかかった橋梁の下の暗がりなのだから
 それにしてもアーチの下に突き出した
 (かんざし)のようなこのでっぱりはなんだ?

 今はない軌道の上に想像の車両を走らせながら
 欅の作りだす緑の隧道の中を歩いていく

※かつての上田城二の丸の堀跡が、ケヤキ並木の遊歩道となっている。
 昭和3年には上田交通真田傍陽線が開通し、堀跡を電車が走っていた。
 バスやトラック輸送に押され、昭和47年に廃線となる。
 簪のようなものは碍子の跡のようだ。


著者略歴
佐伯 圭(さえき けい)

1954年 伊勢崎市生まれ
1985年 詩集「透過光」(装填の会)
2013年 詩集「ゴッタ」(榛名まほろば出版)
2015年 詩集「ネオ・エッダ」(同上)

個人詩紙「濫書堂通信」発行
詩誌「東国」会員
群馬詩人クラブ会員、日本詩人クラブ会員

群馬県伊勢崎市在住