隧道倶楽部 ⑥

              佐伯 圭

三泊四日で 四国をまわった
旅も後半 新居浜で車を借り
向かったのが 別子銅山
           とうなる
山に分け入り 東平地区に辿り着く

下界は降っていなかったのに
東平の山中は雨だった
篠突く 雨
廃墟も 煙る

 

「廃墟 その2」

          とき  2015年9月
          ところ 愛媛県新居浜市 別子銅山東平 (とうなる) 

擦過音のような雨音に包まれ
砂利道を歩いたその先には
崩れかけた煉瓦積みが
雨に打たれていた

赤錆色の肌を伝う
滅びの汗が
わたしのなかにも流れ込む

遠く
山が鳴る


著者略歴
佐伯 圭(さえき けい)

1954年 群馬県伊勢崎市生まれ
1985年 詩集「透過光」(装填の会)
2013年 詩集「ゴッタ」(榛名まほろば出版)
2015年 詩集「ネオ・エッダ」(同上)
2021年 詩集「菜園生活―自選集Ⅰ―」(明文書房)
「菜食帝国―自選集Ⅱ―」(同上)
2022年 詩集「星痕」(土曜美術社出版)

個人詩紙「濫書堂通信」発行
文芸誌「航夜」発行
詩誌「東国」会員
群馬詩人クラブ会員、日本詩人クラブ会員、日本現代詩人会会員