隧道倶楽部 ⑤
佐伯 圭
コロナ禍の人混みを避け
旧信越本線跡の「アプトの道」を歩いた
ラックとピニオン 急勾配を喘ぎつつ登る機関車を
目に浮かべながら 廃線跡をたどる
隧道の 古びた煉瓦積み
くぐり抜けた先に また隧道
暗がりに 滴る地下水
わたしの中から 滲み出てくるものを
たまり水に 流す
そのために ここに来たのか
「橋梁 その2」
とき 2020年5月
ところ 群馬県安中市 碓氷第三橋梁「めがね橋」
喘ぎつつ登り 暗がりを抜けたその先に
その空は開けていた
あふれる緑 その浸食に抗うような
煉瓦の赤に 魅せられている
おまえは いつまでここにいるのか
その問いは
いつも 自分に跳ね返る
著者略歴
佐伯 圭(さえき けい)
1954年 群馬県伊勢崎市生まれ
1985年 詩集「透過光」(装填の会)
2013年 詩集「ゴッタ」(榛名まほろば出版)
2015年 詩集「ネオ・エッダ」(同上)
2021年 詩集「菜園生活―自選集Ⅰ―」(明文書房)
「菜食帝国―自選集Ⅱ―」(同上)
2022年 詩集「星痕」(土曜美術社出版)
個人詩紙「濫書堂通信」発行
文芸誌「航夜」発行
詩誌「東国」会員
群馬詩人クラブ会員、日本詩人クラブ会員、日本現代詩人会会員