隧道倶楽部 ③

              佐伯 圭

「隧道倶楽部(という名の極私的な、脳内組織)」を起ち上げ
「会員1号」を名乗ったのはいいが
きっかけが「隧道」だった だけなので
その後 興味は あちこちに移り 広がってしまう

その「橋梁」に出会ったのは
信州伊那谷に 高遠城を訪ねた帰りだった
子どものころ いつも通ったあの橋に似ている
車を止め 歩いて渡ってみた

古びたコンクリート
その手触りを楽しむ
川原に落ちた影もまた おもしろい

あれから もう十年
あの橋は まだ 掛かっているのだろうか

 「橋梁 その1」

          とき  2009年10月
          ところ 長野県高遠町近く 天竜川に架かる橋  

つなげるために 橋もまた 掛けられたのだが 
そのつながりも 古びていくということか
風化したコンクリートの
粗く 愛しい 手ざわり
その亀裂を さぐりながら 渡る


著者略歴
佐伯 圭(さえき けい)

1954年 伊勢崎市生まれ
1985年 詩集「透過光」(装填の会)
2013年 詩集「ゴッタ」(榛名まほろば出版)
2015年 詩集「ネオ・エッダ」(同上)

個人詩紙「濫書堂通信」発行
詩誌「東国」会員
群馬詩人クラブ会員、日本詩人クラブ会員

群馬県伊勢崎市在住